日時:平成23年11月17日(木) 午後3時~5時
場所:衆議院第一議員会館 大会議室(地下1階)
演題:3.11からの飛翔:ポジティブ心理学からの贈り物
おざき まなみ
講師 尾崎 真奈美 氏
http://manamin.jimdo.com/
相模女子大学 人間心理学科 准教授
米国サーチ研究所 スピリチュアリティ発達研究所 客員研究員
国際生命情報科学会(ISLIS) 評議員、 日本トランスパーソナル学会 理事、
日本心身医学会 会員、 国際ポジティブ心理学会 会員、
高輪ポジティブ心理学研究会 主宰、 ポジティブイノベンションセンター 顧問
内容
ポジティブ心理学の背景にある人間観は、「人間は本来善良で知慧と愛に満ち成長して行く存在である」 という明るいものであるが、演者らは、単純なポジティブ志向ではなく、人間存在のあるがままを受容して行くインクルーシブポジティビティという概念を提唱して来た。
本講演においては、未曾有の災害・核ストレスに対してポジティブ心理学から何が可能かを探る。まずはじめに、災害時における楽観主義やポジティブ感情の功罪とネガティブ感情の効能について論じる。次に、精神の健康と現実認知・コントロール感に対してポジティブイリュージョンを取り上げて問題提起する。さらに、PTG(心的外傷後の成長)についてその特徴をスピリチュアルな成長に焦点化して説明する。その後、PTG促進のために行っているプログラムをいくつか紹介し、光への飛翔をモチーフにしたダンスをお届けしたい。
楽観主義・希望などのポジティブ感情が心身の健康増進に貢献することが知られているが、危機においてはそう単純ではない。楽観的に被害を少なく見積もる正常性バイアスは防衛機制として機能するが、逃げ遅れの被害は深刻である。また、パニック神話とは、危機状態に情報をコントロールしてパニックを防ごうとする思い込みであるが、実際には、むしろ情報不足による不安や不信感がパニックを引き起こすことが知られている。この思い込みは、ポジティブ感情が常に機能するという信念に基づいているが、現状から遊離した幻想はかえって危険であることをデータは示している。しかしながら、病者の持つ非現実的な思い込みが生存期間を長くするというポジティブイリュージョンの効果も一方では知られている。イリュージョンを健康行動の中にどう位置づけるか、本来の健康とは何かという議論と合わせて、対象、状況、内容、機能などにより査定されるべきであると考える。
PTG(心的外傷後の成長)という、人生観が揺るがされるような危機を体験したあとで見られる心理的成長はポジティブ心理学の重要なテーマである。その特徴は、脆弱性の認識、世界観の変容、感謝というスピリチュアルな発達と言い換えられるものである。痛みやネガティブなものを含んだ、日本人の心性に即したインクルーシブポジティビティ介入として実践しているプログラムでは、ユーモアによる心身の開放、表現芸術での自己開示・開放・認知の変容が観察されている。
講師自己紹介
東京大学大学院 教育学研究科 博士課程満期退学。
ペンシルバニア大学 医学部精神科、東京大学医学部公衆衛生学研究室などを経て現職。 人間性の美と可能性を包括的に追求し、研究、ダンス、執筆活動を続け、科学と芸術の統合を試みている。
著書 「スピリチュアリティとは何か」「自分を超えて行く心理学」以上ナカニシヤ出版、「奇跡の起こし方」グラフ社、「魂の恋愛」KKベストセラーズ他。「ポジティブ心理学再考:医療モデルと成長モデルの統合(仮)」ナカニシヤ出版。ブログ「天使語同時通訳します」近日出版予定